中国のデータセンター運営大手の北京皓揚雲数据科技(ベイジン・ハオヤン・クラウド・データ・テクノロジー)は、人工知能(AI)向けのインフラ需要の高まりの中で、総工費が727億バーツ(約3230億円)とされるデータセンターをタイに建設する計画だ。
300メガワット規模とされるこのデータセンターは、6月11日の発表によると、バンコクから東に約180キロのラヨーン県にある、WHAコーポレーションが開発した工業団地内に建設される。タイで物流施設や工業団地の開発を手がけるWHAは、世界のデータセンター事業者の需要に対応するためのテクノロジーとキャパシティへの投資を行ってきた。
タイ証券取引所に上場するWHAは、広さが130万ヘクタールのタイ東部の経済特区EEC(Eastern Economic Corridor)にある工業団地26カ所のうちの3分の1以上を保有している。この経済特区は、これまで数十億ドル規模の投資を海外から集めてきたとされる。
WHAを率いるタイ有数の富豪であるジャリーポーン・ジャルコーンサクンは、今から約20年前に今は亡き夫とともに同社を創業した。WHAはまた、タイの上場企業であるガルフ・デベロップメントと日本の三井物産、東京ガスを含む3社との天然ガスの合弁事業も展開している。
一方、2026年の稼働を目指すラヨーン県のデータセンターは、中国の北京皓揚にとって初めての海外の施設となる。タイ政府は、「ハイパースケーラー」と呼ばれる大規模なデータセンターを受け入れることで、同国をアジア地域におけるデータセンターのハブにしようとしており、北京皓揚はその取り組みを支援している。
「このプロジェクトは、当社のグローバル展開を強化し、東南アジアにおけるデジタルハブの発展に大きく貢献するものになる。また、より多くの中国企業の海外進出を後押しすることになる」と、北京皓揚の会長 兼 CEOのライ・ニンニンは声明で述べた。北京皓揚は現在、北京や上海、広州、マカオ、深圳などの中国の大都市で、5カ所の主要なデータセンターを運営している。
AIブームによってデータセンターの需要が高まる中で、タイはマレーシアやシンガポールと投資の誘致で競い合っている。バイトダンス傘下のTikTokやアルファベット傘下のグーグル、マイクロソフトなどの世界のハイテク大手がタイで新たなデジタル施設を建設しており、タイの企業も投資を強化している。
タイでは最近、ビリオネアのサラット・ラタナワディが率いるガルフ・デベロップメントや、富豪ハラルド・リンクの電力大手Bグリムパワーが、データセンター事業の拡張を加速させている。