宇宙を誕生させた大爆発ビッグバン以降の宇宙で観測史上最も強力な爆発現象を、天文学者チームが検出することに成功した。超大質量ブラックホールによって大質量星が引き裂かれるのに伴い発生する巨大爆発現象だという。
「極端中心核トランジェント(Extreme Nuclear Transient、ENT)」と命名されたこの新種の珍しい爆発現象は極めて明るく、超新星(恒星の爆発)100個分を上回るエネルギーを放出するように見える。
ブラックホールの重力は非常に強力なため、あらゆるものが、光さえも脱出できないほどだ。超大質量ブラックホールは、中でも最も質量が大きいタイプで、銀河の中心に位置している。ガスや固体微粒子を飲み込み、周囲から長期にわたって電磁波を放射し続けるブラックホールもあれば、休眠状態のものもある。姿が見えないその存在が明らかになるのは、宇宙を漂う恒星が不運にも近づきすぎた場合だけだ。ENTによって、本来なら見えないこの種の天体を垣間見られるかもしれない。
10倍明るい
学術誌Science Advancesに4日付で掲載された、今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、米ハワイ大学天文学研究所(IfA)の博士課程大学院生のジェイソン・ヒンクルは「研究チームは10年あまりにわたり、恒星が引き裂かれる潮汐破壊現象を観測しているが、ENTはまったく別物で、輝度(明るさ)が通常見られるものの10倍近くに達する」と指摘している。この高エネルギー現象は、単にぱっと燃え上がってすぐに消えるだけではない。ENTが明るさのピークに達するのに100日以上かかり、その後ピーク時の半分にまで減光するのに150日以上を要する場合がある。
潮汐破壊現象では、超大質量ブラックホールによって恒星がスパゲッティ化される(細長く引き裂かれる)ことで、非常に明るい閃光が発せられるが、ENTはそれよりもはるかに強力だ。ヒンクルは「ENTは、通常の潮汐破壊現象よりもはるかに明るいだけでなく、明るい状態が何年も持続し、現在知られている最も明るい超新星爆発のエネルギー放出量をはるかに上回る」と説明している。この閃光は銀河の中心で発生し、これまでに知られているどの爆発現象よりも大きなエネルギーを放射する。
ENTとは
発生頻度が超新星の1000万分の1以下のENTは、太陽質量の3倍以上の大質量星が超大質量ブラックホールに接近しすぎた場合に発生する。大質量星は潮汐破壊によって引き裂かれ、超新星の100倍以上のエネルギーが放出される。ENTが他と異なっている点は、その進行速度だ。天文学者はENTにより、大質量星が超大質量ブラックホールに「食べられる」のを長期間にわたって観察することが可能になる。