今年第三回目を迎える「Xtrepreneur AWARD」(クロストレプレナーアワード)は、「クロス」(大企業のレガシーである有形無形の資産や技術を2社以上がもちよる)と、アントレプレナー(起業家)をかけあわせた事業共創の造語だ。社内起業とは異なり、企業のレガシーを掛け算することで社会を変えていく。共創プロジェクトを表彰するアワードである。
共創は時として、人間の計画を超えた新たな価値に発展する。古いと思った技術が、人と人との共創でいかにして、進化していくのか? どのように共創の価値は生まれてくるのか?
本アワードの共同開発者であり、NTT Communicationsが運営する事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」の代表を務める戸松正剛氏、そして『付加価値のつくりかた』や『高賃金化』などベストセラーの著者で、経営コンサルタント「カクシン」CEO·田尻望氏の二人に、今回は「マーケティング視点から見た、事業の共創とは」をテーマに以下の対談をお送りする。
━━第一回目の対談は、お二人ともマーケティングの世界ではよく知られているということもあり、「マーケティング視点で事業を共創する」がテーマです。
田尻:やはり皆さんが聞きたいのは、事業共創を実現できる会社とできない会社の差は何か、ということではないでしょうか。私が思うには、マーケティングの視点が広いか狭いか、だと思うのです。(共創先の事業まで)俯瞰しているのか、(自社の事業だけ)浅く狭く見ているのか、そのどちらなのか、ということだと思うのです。
戸松:俯瞰は大事な視点です。マーケティングに携わる人には、それぞれの“専門”家がいらっしゃるので、細分化されてしまう傾向があります。「私、デジタルマーケティングのスペシャリストです」とか、「BtoBではなくてBtoCです」とか、自分のテリトリーをつくられていますよね。
さらに、それぞれの分野で新語が次々とつくられていきます。特にマーケティング専門のメディアでは、マーケティングオペレーションやレベニューオペレーションなど多くの新しいワードが出てきます。しかし本質的な意味は変わらないのに、言葉を分けてしまうので、交わりにくくなってしまっています。