中国の習近平国家主席はドナルド・トランプ米大統領が深夜にぶちまけた言葉について、自分へのお世辞なのか愚弄なのか判断がつきかねているのではないか。
トランプは一国の元首、あるいはタフな交渉相手というよりも、まるで振られた元恋人のような口ぶりで、習とは「ディールを結ぶのがきわめて難しい」とソーシャルメディアで不満をこぼした。結局のところ、中国は2国間の貿易ディール(取引)に関心がないのではないか? そうやっと気づき始めたかのような、わりと本音に聞こえる書き込みだった。
この「吐露」にはいくつも疑問がわく。ここではすべてを挙げきれないが、たとえば、トランプは2017〜21年の大統領1期目に、習から冷たくあしらわれたことを覚えていないのか? あるいは、2025年現在の習を取り巻く状況を見て、どうして彼がもう一度、米中交渉に乗り気になるというふうに思えるのか?
未練がましい元恋人がよくやるように、トランプは可能性を完全には捨てていないようだ。ワシントン時間4日午前2時17分に行ったこの投稿では、「わたしは中国の習主席のことが好きだ。これまでも好きだったし、これからも」と前置きしている。
そろそろ、トランプの側近の誰かが勇気を出して本人にこう伝えてやるべきかもしれない。習はあなたに入れ込んでいないし、貿易をめぐってあなたの駆け引きに乗るつもりもありませんよ、と。
ここ何十年かで最も強力な中国の指導者には、トランプワールドのカオスに付き合っていられないのも無理がない面がある。トランプの大統領2期目が今年1月20日に始まる前から、アジア最大の経済大国は巨大な不動産危機を抱え、それはデフレを助長していた。国内需要の低迷、過去最悪レベルの若年失業率にも直面していた。
昨年11月、習のチームが米大統領選での民主党のカマラ・ハリス候補の当選も視野に入れていた頃、中国政府は出生率の低下を食い止めるのに苦慮していた。急速に進む人口高齢化に対処する方策を検討したり、社会的なサーフティーネットを拡充して、14億人の国民が貯蓄から支出にもっとお金を回すのを奨励したりもしていた。