北米

2025.06.05 10:00

総費用約64億円のトランプの米首都軍事パレード、過去の例でも同様の批判

Joseph Sohm / Shutterstock.com

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戦車やヘリコプターを披露し、何千人もの兵士が行進するという、米首都ワシントンDCで間もなく開催される大規模な軍事パレードがある程度の優雅さと威厳に欠けていることは間違いない。やり過ぎであり、かつあまりに費用のかかるものだ。特に、開催に必要な多額の予算を緊急性の高い別のことに使うことができると考えるとなおさらだ。加えて、軍事パレードは民主的な国というより独裁政権によくあるイメージを思い起こさせる。そしてワシントンの通りはかなりの重量がある装甲車が走ることを想定して造られていない。

6月14日に予定されているドナルド・トランプ大統領の軍事パレードは陸軍創設250周年を祝うもので、偶然にもトランプの誕生日に行われる。このパレードに照らせば、上記の批判は今現在のものに聞こえる。だが、34年前の同じ6月にワシントンで軍事パレードが行われた際も同じような意見が国内のメディアでみられた。

トランプが1期目の時にも実施したがっていたパレードは派手さが特徴だ。米紙ニューヨーク・タイムズによると、「エイブラムス戦車28両、兵士6700人、ヘリコプター50機、馬34頭、ラバ2頭、そして犬1匹」が参加する。また、ストライカー装甲車(兵員輸送タイプ)とブラッドレー歩兵戦闘車も各28両投入され、なんと第二次世界大戦時のB-25「ミッチェル」爆撃機も登場する。

ワシントンで前回行われたパレードは、「ナショナル・ビクトリー・セレブレーション」と銘打って1991年6月8日に開催された。このような行事がワシントンで開催されたのはその46年前の第二次世界大戦終戦以降、初めてだった。このパレードはトランプのものとは異なり、湾岸戦争における勝利を記念したものだ。1990年にイラクのサダム・フセイン政権が隣国クウェートに侵攻して占領したため、米国を中心とする多国籍軍がイラクに攻撃を加え、短期間でクウェートからイラク軍を撤退させた。

湾岸戦争で指揮をとった米軍のノーマン・シュワルツコフ大将が率いるパレードでは、上空を戦闘機が飛行し、約1万人の兵士が行進した。当時のジョージ・H・W・ブッシュ大統領は防弾仕様の閲兵台から観閲。砂漠に溶け込むよう迷彩の塗装が施されたM1エイブラムス戦車やM2A2ブラッドレー歩兵戦闘車が歓声を上げる群衆の前を走行した。1991年にイスラエルとサウジアラビア上空でイラクのスカッドミサイルを迎撃したことで一躍有名になった地対空ミサイルのパトリオットも登場した。象徴的なステルス攻撃機F-117ナイトホークなど、湾岸戦争で活躍したさまざまなタイプの軍用機82機がワシントン上空を飛んだ。

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翻訳=溝口慈子

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