マーケティング

2025.06.11 10:15

過激ブランド戦略「8割怒らせ2割熱狂」の裏にある超合理性

Getty Images

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「価値あるブランドを構築するうえで、人々を怒らせることは避けられない」

Uber、アップル、Amazon、Nike、TikTok、コカ・コーラなど世界を創り変える覇者達からマーケティングを任されるイギリスの起業家、スティーブン・バートレット氏は指摘します。

バートレット氏が直接体得した仕事と人生に効く33の重要原則の一つが「毒にも薬にもならないことはするな」。著書『執行長日記 THE DIARY OF A CEO』(サンマーク出版)から、一部引用・再編集してご紹介します。


「メリットが上回る」

本書の執筆にあたり、私はロサンゼルスの書店バーンズ&ノーブルを歩きまわって、出版界の動向についてちょっとした調査を行った。最も驚いたのは、昨今では膨大な数の自己啓発書が罵倒語だらけだということだ。嘘ではない。

本の表紙に罵倒語を使う流行は、2016年にマーク・マンソンの『The Subtle Art of Not Giving A F*ck』(『その「決断」がすべてを解決する』三笠書房)が刊行されたのをきっかけに爆発的に広まった。本書を書くためにマンソンにもインタビューをしたが、彼によると1500万部以上のベストセラーだという。氾濫状態のジャンルでしのぎを削る著者たちは、明らかに「意味飽和」を避け、「壁紙フィルター」をすり抜けて読者の脳の注意を引こうとしている。

2018年までに、マンソンの著書以外にも、『What the F*@# Should I Make for Dinner?』『50 Ways to Eat Cock』『Unfu*k Yourself』(『あなたはあなたが使っている言葉でできている』ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『Calm the F**k Down』がアマゾンのベストセラーリストで25位以内に入っている。過去のデータを調べると、10年前にはタイトルに罵り言葉が含まれた本は1冊も上位にランクインしていなかった。

サラ・ナイトの『Calm the F**k Down』の編集を担当したマイケル・シュチェルバン(『Calm the F**k Down』を含め、ミリオンセラーとなったナイトの〝罵倒語シリーズ〟を手がけた編集者)は、次のように述べている。

出版社も著者も、あらゆる雑音をはねのけて、読者の心をつかむ方法を模索している。これはそのための方法の1つで、一部の本で成功すると、ほかの出版社も2匹目のドジョウを狙う。タイトルに罵倒語が入った本を好まない読者もいれば、そうした本を置きたくない書店もある。だが、結局はメリットが上回る。

「メリットが上回る」という彼の言葉は、まさにマーケティングの大原則だ。ここでのメリットとは、意味飽和を避け、メッセージに耳をかたむけてもらうこと。

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文=スティーブン・バートレット(訳:清水由貴子)

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