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2025.06.03 12:00

カカオはチョコだけじゃない、秘める力を引き出した「スーパーフード」は成長するか

Shutterstock.com

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食品・飲料部門で今後起こり得るイノベーションの道筋は数多くあるが、経済的にも持続可能性の観点からも特にメリットの大きい戦略の一つは、収穫された作物のこれまで利用されていなかった部分の用途を見つけることだ。この考え方を反映させる候補となる作物のリストを、代替タンパク質の研究や普及に取り組んでいるシンクタンク、Good Food Institute(グッド・フード・インスティテュート)が公表している。このような可能性をひらくことができれば、作物の価値を高めるだけでなく、土地や水、燃料、栽培過程で投じる他の物など、全体的な資源利用効率を高めることができる。

トウモロコシや大豆といった主要商品作物の大半では潜在的な副産物や「サイドストリーム(従来捨てられているようなもの)」のほぼすべてが回収されて販売されている。他の多くの作物では、収穫物を完全に利用するために必要な過程やロジスティクス、事業構造を開発するのはかなり難しい。だからこそ、この種のイノベーションがカカオに応用されている例を見るのは励みになる。カカオは人気のフレーバーの一つであるチョコレートの原料となっている作物だ。

カカオは熱帯樹木の作物で、大きなさや(カカオポッド)をつける。ポッドの中の種子は一般に「豆」と呼ばれ、収穫重量の30%しかない。残りの70%は繊維質の「皮」と白い果肉だ。

カカオは熱帯樹木の作物で、大きな「さや」(カカオポッド)をつける(Shutterstock.com)
カカオは熱帯樹木の作物で、大きな「さや」(カカオポッド)をつける(Shutterstock.com)
カカオポッドの中の種子は一般に「豆」と呼ばれ、収穫重量の30%しかない。残りの70%は繊維質の「皮」と白い果肉だ(Shutterstock.com)
カカオポッドの中の種子は一般に「豆」と呼ばれ、収穫重量の30%しかない。残りの70%は繊維質の「皮」と白い果肉だ(Shutterstock.com)

通常、果肉や皮は商品に使われることはなく、価値のある「豆」を取り出して洗浄し、発酵させるための工程に焦点が当てられてきた。そして、カカオ豆を砕いてペースト状にし、他の材料を加えて甘さや「口あたり」、刺激性などが特徴のチョコレートができる。

チョコレートのバリューチェーン(価値連鎖)の対極に位置する企業2社が、収穫するカカオをより十分に活用しようとそれぞれにプロジェクトを開始した。1社は、起業家のオデッド・ブレナーが興した会社だ。ブレナーは米国でレストラン事業を成功させたが、その事業を売却し、新たな部門に進出することにした。南米の青果市場でさや丸ごとのカカオが売られているのを見て触発されたブレナーは、凍らせたカカオの一部から作られた製品を販売する飲料チェーンを展開しようと考えた。ブレナーはこの事業を立ち上げるため、2018年にアビブ・シュバイツァーと共同でBlue Stripes(ブルー・ストライプス)を設立。だが、新型コロナのパンデミック時に結局、食料品店で販売する消費者向けパッケージ商品(CPG)モデルにシフトした。

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翻訳=溝口慈子

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