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2025.05.27 11:00

中国BYD株が9%急落、EV業界の競争激化を懸念 「最大34%の値引き」発表で

2025年4月、上海モーターショーに出展されたBYD「シール07 DM-i」(Robert Way / Shutterstock.com)

2025年4月、上海モーターショーに出展されたBYD「シール07 DM-i」(Robert Way / Shutterstock.com)

中国の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)の共同創業者でビリオネアの王伝福(ワン・チュアンフー)の保有資産は5月26日、同社の株価が急落したことを受けて約18億ドル(約2556億円。1ドル=142円換算)も減少した。この株価の下落は、BYDが以前から求めやすい価格で販売していたエントリーレベルの車両の価格を、最大34%値引きすると発表したことを受けてのものだ。

同社の会長でCEOを務める59歳の王の保有資産は、今もなお283億ドル(約4兆円)に及んでいるとフォーブスは試算している。しかし、香港と深センで二重上場するBYDの株価は、26日の香港市場で一時9.2%の急落となり、深セン市場でも6.2%下落した。

BYDはこの日、6月末までの期間限定で、合計22車種のバッテリーEVとプラグインハイブリッド車両を値引きすると発表した。最も値引き幅が大きいのは運転支援機能を搭載したハイブリッドセダンの「シール07 DM-i」で、現状の価格を約34%下回る10万2800元(約203万円。1元=19.75円換算)で販売される。また「宋Plus EV」の価格も11万7800元(約233万円)となっており、2割以上引き下げられた。

BYDが販売促進のために値引きを行うのは今回が初めてではないが、この値引きは、中国のEV分野でより激しい価格競争が起きるかもしれないという懸念を引き起こしている。DZTリサーチの調査責任者のクー・イェンは、年初来で60%を上回る上昇率を記録していたBYDの香港上場株の投資家は、この発表を機に利益確定売りを行ったと分析した。

上海を拠点とするオートモーティブ・フォーサイトのヤール・チャンは、BYDが価格に敏感な消費者を取り込むために、より積極的な価格戦略に打って出たと述べている。BYDは、2月に1万ドル(約142万円)未満のモデルにも最新ADAS(先進運転支援システム)を搭載して販売拡大を図ったが、この戦略は期待したほどの成果を得られなかった可能性があると彼は指摘した。

また、最近のシャオミ(Xiaomi)のEVによる死亡事故の発生を受けて、中国の消費者の間で、自動運転ソフトウェア全体に対する不安が高まっているとチャンは指摘し、「中国国内での販売を伸ばすためには、値下げが最も手っ取り早い手段かもしれない」と述べている。BYDは、2025年の世界の販売目標を550万台に設定している。

アナリストは、他の自動車メーカーも値下げの動きに追随せざるを得ない可能性があると述べている。26日の香港市場では吉利汽車(ジーリー・オートモービル)の株価も8%以上急落し、長城汽車(グレートウォール・モーター)の株価も5%以上の下落となった。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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