割り算が絡むと、とたんに頭が混乱して計算ができなくなってしまうという人は多いのではないでしょうか。実際、四則演算のなかでは割り算が一番厄介で、さらに割り算と密接に絡む「割合」や「比」になると話の抽象度が一気に上がります。
大人のための数学教室を運営する堀口智之氏の著書『仕事ができる人がやっている「ざっくり計算力」を身につける』(青春出版社)から、“数学ギライ”な人でもわかる割り算の考え方を、一部引用・再編集してご紹介します。
「割り算・分数・割合・比」の意味を正確につかむ
まず割り算には必ず「割られる数(被除数)」と「割る数(除数)」があり、「割られる数のなかに、割る数がいくつ入るか」を計算するものです。
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300÷5=300のなかに5がいくつ入るか
(60個入るので答えは「60」)
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「割り算」という言葉通りの意味で考えると、「300÷5」は「300を5つに割る」と考えることになりますが、たとえば「300÷0.5」のような1未満の小数で割るときに混乱してしまいます。
でも、割り算の本来の意味である「『割られる数』のなかに『割る数』がいくつ入るか」で考えると、「300のなかに0.5がいくつ入るか」とすればいいことがわかります。0.5が2個でようやく1になるわけですから、合計600個。答えは600です。
分数は割り算の式を記号で表したもの
分数は割り算をよりコンパクトな記号で表したもので、分子が「割られる数」で分母が「割る数」です。
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1÷3=1/3=0.3333.....
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分数はうまく割れば自然数(1、2、3、4、5……)になることもありますが、多くは小数として表すこともできます(1/3=0.333……)。
まずはこの関係をしっかり理解し、「割り算の式は分数にも、その逆数のかけ算にも置き換えられる」と頭に入れてください。
割合とは「何倍か」を表したもの
次に割合です。割合の教科書的な定義は「もとにする量を1としたときの比べる量の値」といった感じですが、ほとんどの人は「1とする」の意味で混乱します。代わりに、こんな定義ではどうでしょうか。
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「割合とは『何倍か』を表したものである」
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一気にシンプルになりました。ただし「何倍か」を計算するには「基準となる数(1倍に当たる数)」と「比較する数(何倍だと表現したい数)」が必要です。たとえば「A社の利益はB社の2倍」も割合を示していますが、「基準となる数」はB社の利益で、「比較する数」はA社の利益です。
では2倍という割合はどう計算したかというと、A社の利益をB社の利益で割っています。「どっちで割るんだっけ?」と迷う人が多いですが、あらためて説明すると、割合は「基準となる数に対して比較する数が何倍か」です。
ここで割り算の定義を思い出してもらうと、「比較する数(A社の利益)のなかに基準となる数(B社の利益)が何個入るか」と考えるのと同じです。基準となるのは必ず「割る数(分母)」。ここが重要です。
もしA社の利益が30億円でB社が15億円なら、「30億÷15億」で答えは2となります。割合は単に2と表してもいいし、倍率だと「2倍」、百分率だと「200%」、歩合だと「20割」。いずれも何倍であるかを表しています。
割合が1より小さくても理屈は同じです。基準をA社に変えれば「15億÷30億」で割合は0.5、倍率は「0.5倍」、百分率は「50%」、歩合は「5割」になります。