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2025.05.27 12:00

日本人宇宙飛行士の月面着陸、いつ誰が実現? NASA予算の大幅削減で混迷するアルテミス計画

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トランプ政権が5月2日に発表した予算教書の簡易版によると、NASA(米航空宇宙局)の2026年度予算は昨年度の248億ドル(約3兆5500億円)から188億ドル(約2兆6900億円)へ大幅に削減される見込みだ。この予算案が米上下院議で可決されれば米国だけでなく、日本や欧州においても今後の宇宙計画を大幅に見直す必要に迫られる。

とくに注目されるのは有人宇宙プログラムの行方だ。米国が主導するアルテミス計画では、月への輸送手段として有人宇宙船「オリオン」と超大型ロケット「SLS」を運用してきた。しかし、今回の予算草案では、予算超過が激しい同機の廃止が提案されている。さらに、月面探査の拠点として建設予定の月軌道周回ステーション「ゲートウェイ」の中止も要求されている。

ただし、NASAのほぼすべてのプログラムで予算削減が提示されるなか、トランプ政権は、月と火星にヒトを送り込むミッションだけは予算を増額することを提案している。これは宇宙における米国の覇権を守り、中国を牽制する策といえる。中国は2030年にヒトを月に立たせ、月面基地の建設を開始するとともに、同年には無人探査機「天問3号」を火星に向けて打ち上げ、史上はじめて火星の岩石を地球に持ち帰ろうとしている。

今回の予算案が現実となった場合、米国が牽引する有人探査プログラムが今後どのように再構築されるかは不明だ。しかし、限られた時間と予算のなかで中国より先に成果を出すには機材の選択肢が限られるため、中止される機材の代替機を予想することは可能だ。

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ルナクルーザーと日本人2名が月面へ

日米両政府は2024年4月、アルテミス計画において日本の与圧式月面探査ローバーを月面に送るとともに、2名の日本人宇宙飛行士を月面に着陸させることで合意した。与圧ローバーの機材名は記されていないが、これはJAXAとトヨタが共同開発する「ルナクルーザー」を指す。 同ローバーは2024年秋にはじめて試験走行が行われ、その様子が公開された。

 今年3月にデザインが更新されたトヨタの「ルナクルーザー」。現状では2032年のアルテミス7からの運用が予定される(c)TOYOTA
今年3月にデザインが更新されたトヨタの「ルナクルーザー」。現状では2032年のアルテミス7からの運用が予定される(c)TOYOTA

合意書が交わされた時点では、ルナクルーザーの運用は2031年のアルテミス7が予定されていたが、その後同ミッションは2032年にスリップしている。日本人宇宙飛行士が月に降りる時期は明記されていないが、ルナクルーザーの運用に付随して発表されたことから、少なくとも1名はアルテミス7でアサイン(割り当て・任命)されると思われる。

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編集=安井克至

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