時間は最も貴重なリソースだ。だが、多くのプロフェッショナルが効果的に使いあぐねている。膨大な数のタスクに追われて注意が行き届かず、長時間労働に陥ったり、ウェルビーイングを犠牲にしたり、あるいは常に遅れを取り戻そうとしたりしがちだ。だからこそ、実証済みの時間管理戦略をとることが欠かせない。中でも最も効果的なものの1つが「4D法」だ。このアプローチでは本当に重要なことに集中し、ストレスを軽減しながら時間を最大75%節約することができる。
その秘訣は優先順位をつけることと、脳の働きを理解することにある。旧ソ連の心理学者ブリューマ・ツァイガルニクが発見した心理原則「ツァイガルニク効果」によると、人は完了したタスクよりも未完了のタスクをよく覚えている傾向がある。やり残したタスクは気力を消耗し、集中力をそぐ。そしてストレスを増大させる。返信していないメールやたたんでいない洗濯物、あるいはリストに残っているやるべきことに注意がそれている頻度を考えてみるといい。
タスク一覧にチェックマークを入れて「完了」にすると、完結させた感じや安堵が得られる。一方で、筆者が最もインパクトがあると感じているのは、達成感を得るためにすべてを終わらせる必要はなく、目が覚めたときに気に掛かっていた1つのことをやり遂げるだけでいい、ということだ。その気に掛かっていた1つが、精神的に最も負荷の大きいタスクであり、まず取り掛かるべきことだ。
すべてをこなそうとするのではなく、これから紹介する時間管理術を使えば「雑音」を断つことができる。本当に重要なことに集中してそうでないことを排除し、最終的にはストレスをさほど感じずにより多くのことを成し遂げられる。
4D法とは
4D法は集中する、誰かに任せる、延期する、削除するタスクを決めることに役立つ。タスクをそれら4つの明確なカテゴリーに分類することで、不必要な仕事をなくし、重要なタスクに注力できる。その結果、タスクの「精神的」負荷が75%軽減され、真に成功をもたらすことに時間を使えるようになる。
4つのD(Do Now、Do Later、Delegate、Delete)は以下の通りだ。
1. 今すぐやる(緊急かつ重要なタスク):直ちに注意を向ける必要があり、目標に直接影響するタスクだ。緊急(すぐにやらなければならないこと)であり、重要(目標に近づくためのもの)でもある。まずこれらのタスクを優先し、気を散らすことなく正面から取り組む。
2. 後でやる(重要だが緊急ではないタスク):これらは重要だが、期限は迫っていない。後で取り組まなければならないものの、緊急で重要なタスクが優先される。このようなタスクをほったらかしにするのではなく、予定表の特定の時間枠を確保して、放置されたままにならないようにするタイムボックスの手法をとろう。そのタスクに取り組む具体的な日時を決めておけば、うやむやになったり、すべきタスクがたまったりすることはない。
3. 誰かに任せる(緊急だがそれほど重要でないタスク):急いで取り組まなければと感じるかもしれないが、必ずしもあなたの時間を使うことに最もふさわしいタスクとは限らない。あなたに代わって他の人が処理できるタスクだと考えよう。報告書であれメールの返信であれ、あるいは事後処理であれ、誰かに任せたり、能力や専門知識のある同僚と協業したり、あるいはチーム内の他の人に権限を与えたりできそうな分野を特定する。そうすることで、あなたの専門知識と注意を必要とする仕事に集中できる。
4. 削除する(やる価値のないタスク):ToDoリストにあるすべてのタスクに、時間を割く価値があるとは限らない。目標に貢献しないもの、優先させなくてもいいものは、完全に削除することを検討しよう。ここにはあなたのエネルギーを消耗させたり、最も重要な仕事から時間を奪ったりする、反復的で価値の低いタスクも含まれる。