イーロン・マスクが率いるテスラは、6月にロボタクシー(自動運転タクシー)のサービスをオースティンで開始する予定で、最大20台の自動運転の「モデルY」をテキサス州オースティンで走らせようとしている。彼は、この計画の成功にテスラの将来を賭けており、同社の電気自動車(EV)の売上が低迷する中で起死回生を図ろうとしている。
だが、ここには大きな問題がある。テスラは、自社のロボタクシーが安全に運行できるという証拠をまだ提示しておらず、これまでの「オートパイロット」や「フルセルフドライビング(FSD)」のソフトウェアが引き起こした死亡事故や、同社のテクノロジーが安価なカメラに頼り続けていることなどを考えれば、オースティンでの試みは大失敗となる可能性がある。
「間違いなく失敗に終わる」と、以前からテスラに批判的なソフトウェア開発者のダン・オダウドはフォーブスに語った。自動運転機能をオンにしたテスラの車両が、子どもを模したマネキンを認識せず、何度もひいてしまう動画をテレビのCMで流したことで知られる彼は、FSDのすべてのアップデートを入手次第テストする「ドーン・プロジェクト」という反テスラ運動を主導している。
現バージョンのFSDを検証したオダウドは、「80分ほど走行させてみた結果、7回の失敗があった。運転席に人が居なかったとしたら、事故を起こしていたはずだ」と語った。
テスラのロボタクシー技術が、これまで一般に披露された唯一の場は、昨年10月にロサンゼルスのワーナー・ブラザース・スタジオで行われた「サイバーキャブ」のお披露目だった。このイベントでは、招待されたテスラファンを乗せた車両が、歩行者のいない仮設の街並みを走行し、テスラの技術者がその様子を間近で監視していた。
このデモに立ち会ったバージニア州運輸省の安全性に関する研究員ノア・グッドールは、「このデモは、現実の都市環境を走るテストからは程遠く、遊園地のアトラクションのようだった。テスラの車両が実際の道路上でありえる課題にどのように対応できるかを見たかったが、そのようなイベントではなかった」と述べている。