日本発・日本型の新たな経営理論として、独自の手法「ジョイント・イニシアティブ」を掲げる戦略コンサルティングファーム「グロービング」。同社がクライアント企業にもたらす新しい価値とは何か?一線の現場で働く3人のコンサルタントが語り尽くす。
2021年に創設された戦略コンサルティングファーム「グロービング」。その特徴のひとつとして挙げられるのが「ジョイント・イニシアティブ(JI)型コンサルティング」だ。“内なる外”を掲げるこの手法は、同社のコンサルタントが経営層や事業責任者であるCxOの懐深くにまで入り込み、適切な意思決定へ導く独自の伴走支援といえる。
第3回目となる本稿では、実際にジョイント・イニシアティブを行うコンサルタントたちの話からその実態をひも解いていく。登場する3人のコンサルタントはみな、それぞれが「経営陣やコンサルが策定する戦略と、それを実行する現場との乖離」という課題に真摯に向き合っているという。彼らの姿から見える、ジョイント・イニシアティブ型コンサルの実像とは。
「ロジカルで、きれい。」だけでいいのか
グロービング創業メンバーのひとりでパートナーの小寺拓也は現在、顧客である大手人材サービス企業に出向し、23年に新規に立ち上げたITコンサルティング事業の本部長職を務めている。事業責任者として職務の領域は広く、事業戦略の策定から経営管理や組織マネジメントはもちろん、人材採用さらには、スタートアップとの資本業務提携の実行までを担う。同事業部は創設から2年を待たずに約50名ものITコンサルタントを抱えるまでに成長し、直近1年内に100人規模までの拡大を目指している。急成長を実現した小寺は次のように「成功の確度」を上げてきたのだという。
「新規事業の課題として、人材や経験の不足などから自社の社員に任せても上手く立ち上がらないことが挙げられます。そこで、我々グロービングが経営のプロとして事業の立ち上げを担うことで、成功の確度を上げていく役割を果たします。組織の立ち上げから人材マネジメントの仕組み構築までを手がけ、クライアント企業のなかに持続的な成長の仕組みをつくり、それらをアセットとして残していくのです」
事業部の創設から拡大・成長に導いた小寺が重視したのは、考え方や動き方をアジャイルに決めていくことだったという。
「自らが事業責任者として内側に入り込んでいくことで、クライアント企業での現場経験だけでなく、経営の舵取りについて多くを学びました。そのうえで、事業会社が本当に重視しているのは、戦略を実行した結果として明確な成果を出すことで、そのために必要なのは実行まで共に走ることだと実感することができました。外部のコンサルファームがロジカルできれいな戦略を描き、実行はクライアント企業に委ねられるというのではなくて、外部の存在だとしてもクライアント企業の内側で試行錯誤を重ね、戦略そのものをアジャイルにアップデートしていくことが重要なのです」
アジャイルな意思決定は、ときに自分自身の考えや動き方をも変えるという。コンサルタントの人材マネジメントは、パートナークラスで通常10人前後というなかで、小寺は50人もの人材マネジメントを経験した。これほどの規模をマネジメントするのは小寺にとってもはじめての経験だったというが、“内なる外“としてクライアント企業に深く入り込むというミッションのもと、小寺はその挑戦を乗り越え、事業を着実に成長へと導いていった。
こうした「ジョイント・イニシアティブ」というコンサルタントの手法・あり方のもと、グロービングが生み出すソリューションは、クライアント企業にとって、組織を根っこから変えることにも通じると小寺は言う。
「“内なる外”である我々がクライアントとの議論を重ねることで、クライアントの考え方や仕事のやり方が進化していると感じています。その進化もクライアントのアセットとして蓄積されていきますから、我々が離れた後も社内には変革できる人材が残っていくことになる。このように、グロービングがパーパスとして掲げる“グロース・インフラストラクチャー”とは、クライアント企業ひいては日本経済の成長基盤を整備することなのです」

理想的なことが「正しいこと」ではない
「トップダウンの発想が強い欧米と比べると、日本は現場の人が腹落ちしなければ動かないボトムアップの意識が強くあります。それは日本の製造業における現場の強みとも言えます。そのため、日本では現場に合わせたコンサルティングが必要とされています。“内なる外”として企業文化や現場の意識を把握したうえでの戦略を打ち出せるのは、グロービングならではの新しい価値だと思います」
世界的な製造メーカーで、全社戦略となるAIプロジェクトの推進を担う孟拓宇も、小寺に同意を示す。現在孟は、AIを活用した業務改善から新規事業創生を担うセンターオブエクセレンス(CoE)の一員として、AI戦略の企画からAIを活用する現場リーダーの右腕としての伴走支援を行っている。自身でも日進月歩のAI技術を日々学ぶだけでなく、グロービングが有する日本でも一級線のAI開発者とタッグを組んでプロジェクトを推進している。そんな孟が語る真に実効性のある戦略策定は、“AI活用と同じ”と、捉えることができるようだ。
「AIは膨大な量の情報をもとに、より正確なアウトプットを出力しようとするわけですが、戦略策定も同様で、課題を解決するための正しいアウトプット(≒戦略)を導き出すためには正しいインプットに基づく必要があります。インプットの質がAIの性能を左右するように、戦略の質も正しい現状理解に依存します。戦略の大家である孫子も“敵を知り己を知らば百戦危うからず”と言っているように、“外”からの競争環境の理解と“内”からのクライアントの正しい理解が戦略策定には不可欠です」
孟がこう話すのは、自身がクライアント企業にとって単なる「外」から「内なる外」へと転じた経験があるからだ。
「実は今のプロジェクトも、外部のコンサルタントとしてアドバイザリーを行っていた最初の数カ月の成果物は、正直言ってクライアントの問題意識・現状課題に基づいてないものも多かったです。クライアントは日本を代表する企業の幹部層であるため、想像を絶するほど忙しく、短い時間でのやりとりで十分なコンテキストを理解するには、外部の立場だとどうしても限界がありました。
今はクライアント企業の中に入ることで、クライアントの“実”につながる成果物を出せていますし、より評価されています。過去の成功したプロジェクトとそうでないプロジェクトを振り返ると、戦略の実行主体である“クライアント理解に関する解像度”に大きく左右されていると思います。
加えて最近は、海外に多数の拠点を構える製造グループのPMI(買収後企業統合)もリードしました。言語も文化も時差も異なる環境では、まず経営と現場が共有できる“腹落ちする一枚絵”を描き、誰が読んでも迷わないシンプルなKPIとロードマップに落とし込むことが要でした。多様なバックグラウンドをもつステークホルダーが同じ方向を向くためには、地道な対話を重ねて共通認識を揃える──このプロセスこそが“内なる外”を国境の外でも機能させる鍵だと実感しています」
孟の将来予測は、これまでコンサルが強みとしてきた課題解決力はいずれAIに代替される、というものだ。その先で人間が果たすべきは「何が問題かを定義する」ことであり、“課題創造力”が重要となると孟は説く。
「コンサルティングは今までクライアントが抱える課題に対して、業界知見や分析を通じて打ち手を出してきましたが、“決められた問題を解く”ことはAIが得意とする領域であり、いずれ代替されると思います。そのようななかで、クライアント自身も気づいていない課題を提示すること(≒課題創造)がより求められると思います。グロービングでもそのようなコンサルタントの育成に注力をしています」

若手リーダーが“高く、深く”挑戦し、3年で視座を一段上げる職場
もしあなたが20代後半〜30代前半で「難題に挑みながら経営の最前線へ飛び込みたい」と考えるなら、グロービングは最速の跳躍台になる――。「戦略と現場が噛み合わない」――そんな課題を肌で感じた若手コンサルや事業会社出身者も、経営と現場をつなぐリアルを学ぶためにグロービングの門を叩く。経験の有無を問わずそうした人材は後を絶たないという。
グロービング入社後、今年4年目を迎えたシニアコンサルタントの大西玲子は、未経験からコンサルタントへ転身を果たしたひとりだ。
新卒で大手アパレル企業に入社した大西は、小売店の店長代理として現場で働くなかで本社から下りてくる方針や戦略と現場とのズレに強い違和感を覚え、この経験から、経営と現場の分断を解決できるコンサルへの転身を志した。クライアントに寄り添って事業変革を目指すグロービングのビジョンに共感するとともに、大手のコンサルタントファームではありがちな一律的な縦割り、ではなく、業界もソリューションもさまざまなプロジェクトを通して経験を積める組織体制も同社を選んだ理由だ。
大西は入社直後からM&A領域のプロジェクトに従事した。初期は、契約締結からクロージングまでの期間を指す”Pre-PMI”のプロセスを支援するプロジェクトに携わり、経営統合の前準備としての制度/業務プロセス統合を、クライアント企業の現場社員と膝を突き合わせて進めていく経験を積んだ。
現在は、M&A戦略の最上流工程であるデューデリジェンスや、PMIにおける100日プラン策定支援(M&A成約後の事業戦略の立案や組織体制構築)といったプロジェクトも手がけている。
とはいえ、未経験で飛び込んだコンサルティングの世界は、最初から順風満帆だったわけではない。大西は苦笑いを浮かべながら、こう振り返る。
「エクセルもワードもまともに操作できない状態でのスタートで、はじめて配属されたプロジェクトでは、正直、ジョイン直後は目も当てられない状況だったと思います」
経営統合の準備に伴う膨大なタスクをスピード感をもって推進するPre-PMIの現場で鍛えられ、大西は実務経験を積み重ねるとともに、対象会社のマネージャークラス以上の社員、約100名が参加する会議の準備や当日の運営主体を任されるまでに成長を遂げた。
このように、グロービングでは「大きな役割も若手に積極的に任せる」というカルチャーが根づいている。一方で、進捗に課題があれば上司がきちんと関与し、支援を惜しまない。この環境こそが、若手の挑戦と成長を加速させる土壌となっている。
さらに、グロービングには“社内チャレンジ制度”という、手を挙げれば年次に関係なく、最上流の工程を手がけるチームのプロジェクトに参画するチャンスがある。大西もこの制度を活用し、かつて担当していたクライアントの実行支援プロジェクトから、戦略立案に特化したプロジェクトへの挑戦、というステップアップを果たし、コンサルタントとしてのさらなるスキルの研鑽を続けている。
「社内チャレンジ制度」で最上流プロジェクトに従事し始めてからわずか半年だが、MBB出身の鍛え抜かれたパートナー陣による指導やクライアント経営者とのディスカッションといった新たな経験が、自身を同年代に比べ圧倒的なスピードで成長させていることをすでに実感していると大西は語る。
「特に、現在従事しているような戦略策定プロジェクトでは、クライアント企業の経営者も一刻も早く業績改善や更なる業績向上に向けたアクションを起こしていきたいと考えているため、判断までのスピードは非常に重要な要素となります。
パートナー陣を始め、チームのメンバーには、クライアント企業の事業における課題や問題点をまずはざっと俯瞰して、それに対する戦略の仮説をつくり、それをさらなる調査やインタビューなどを経て検証する……というサイクルを繰り返し回すことで高速でブラッシュアップしていく、「仮説driven」な動き方が求められます。これは、以前従事していた、より現場に近いプロジェクトで求められていたような、クライアントとの対話を繰り返し、そのなかから課題を見つけ、漏れの無いように対応していく動き方とはまったく違うアプローチです。
現在のチームにジョインした当初は、その圧倒的なスピード感に驚かされましたし、正直なところ、ついていくだけで精一杯でした…。どちらのアプローチにもそれぞれのメリットがありますが、現在のチームでのプロジェクトを通じて、思考の瞬発力や議論の深さを経験し、私自身の成長スピードも早めてくれているのを実感しています」
「3年後、自分の想像を超える姿に出会いたい人は、ぜひ次の募集説明会でお会いしましょう」──そう言って大西は笑顔を見せた。

日本のコンサルタントの「生育基盤」になる
大西がそうであるように、グロービングはクライアント企業と伴走すると同時に、コンサルタント個人のグロース・インフラストラクチャーとしても機能している側面がある。
「私が『社内チャレンジ制度』を活用して現場のオペレーションに近い領域から上流工程のプロジェクトに従事する、という挑戦をできているように、グロービングには自分から積極的に手を上げることが歓迎される風土があります。若い頃からスピード感をもって成長したいという意志や、新たな経験や挑戦をどんどん積み重ねて成長していきたいというグロース・マインドセットをもつ方にとって、これ以上ない環境だと思います」
コンサルタントの仕事を通じて自身のキャリアとスキルを育みながら、それぞれが見据える未来像はさまざまだ。グロービングはそうした未来像を実現できる基盤となりえるというのが、3人に共通する実感だ。
小寺は、将来的に自ら経営の舵取りを行えるプロフェッショナルとなることを目指している。視野に入るのは、日本の産業全体への貢献だ。
「先行き不透明な世界において、日本社会や企業は大きな変革に迫られています。そのなかで、自らが変革のリーダーとして活躍していくためには、経営者としての目線や事業全体をグロースさせる仕組みづくりといった能力を身につける必要があります。我々が起こす変革によって日本の産業を継続的に成長できるようにすることで、一人でも多くの人が幸せに働ける社会を実現したい」
孟は自身の出自を踏まえて、将来は社会課題の解決に取り組みたいと明かす。
「子どものころから社会問題の解決に関心が強く、大学院でも公共政策を専攻していました。社会課題に取り組むNPOなどはすでに数多くありますが、最終的にスケールするためには想いだけでなく、ビジネス面でのインセンティブをつくることも重要です。コンサルタントの仕事はビジネスの根幹である“課題創造力”と“課題解決力“の双方を鍛えられる最適な場だと思っています」
グロービング
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小寺 拓也(こでら・たくや)◎グロービング パートナー。大阪大学大学院卒業。NTTデータ、デロイト トーマツ コンサルティング、PwCコンサルティングを経て、グロービングに創業メンバーとして参画。新規事業戦略策定および実行支援、中長期戦略策定、デジタル戦略策定等に従事。現在、大手人材サービス企業へコンサルティング事業責任者(本部長)として出向中。
孟 拓宇(もう・たくう)◎グロービング パートナー。東京大学法学部卒業、東京大学公共政策大学院修了。ローランド・ベルガー(シニアコンサルタント)、ベイン・アンド・カンパニー(シニアマネージャー)を経て現職。9年の戦略コンサルティング経験のなかでは、主に自動車をはじめとした製造業関連の戦略案件プロジェクトと、PEファンド向けプロジェクト(BDD/PMI)に従事(ベインではPEグループのAPACマネージャーを務める)。
大西 玲子(おおにし・れいこ)◎グロービング シニアコンサルタント。早稲田大学政治経済学部卒業。日系大手アパレルメーカーを経て、グロービングへ参画。参画後は、Pre-PMIにおける統合事務局やサプライチェーン/業務プロセス統合支援、PMI100日プラン策定、ビジネスデューデリジェンスなど、M&A関連のプロジェクトを上流から下流まで幅広く実施。
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