サイエンス

2025.05.11 17:00

ホホジロザメ数百頭が毎年集結する太平洋の「謎スポット」

Martin Prochazkacz / Shutterstock.com

Martin Prochazkacz / Shutterstock.com

ホホジロザメ(学名:Carcharodon carcharias)は、冷酷な殺し屋という不当な汚名を着せられている──こうした悪評には、『ジョーズ』などの映画が少なからず一役買っている。しかし彼らは、最も洗練された海の頂点捕食者の一例であり、その起源は4億年以上も昔にさかのぼる。

2000年代前半、海洋生物学者がホホジロザメの不可解な移動パターンに気づきはじめた。カリフォルニア中部沖でホホジロザメに位置情報タグを装着した研究チームは、彼らが1カ月にわたる長旅の末に、太平洋のど真ん中にある、一見したところ不毛な海域に到達することを突き止め、この海域を「ホホジロザメ・カフェ」と名づけた。

この長距離移動の終着点は、とりたてて獲物が豊富には見えない。にもかかわらず、衛星テレメトリーによれば、多くの個体はここに数カ月とどまったあと、ようやく沿岸の採食域に戻っていた。

彼らほどの大型捕食者が、海の砂漠と言えるような海域の、いったい何に引かれているのだろうか? 当初の仮説には、交尾のために集合している、移動の際に使われる参照点である、といったものがあった。

しかし、最近行われた海洋学探査から、ホホジロザメ・カフェの謎が少しずつ解き明かされはじめた。この海域が、知られざる生命の網を紡いでいることが明らかになり、外洋におけるサメの行動に関する私たちの理解はいま、根本的に書き換えられつつある。

ホホジロザメ・カフェ:大洋の真ん中にある謎

ホホジロザメ・カフェは、北緯23度37分、西経132度71分を中心とした、ほぼ円形の海域であり、バハ・カリフォルニアとハワイの中間に位置する。面積はコロラド州に匹敵するが、表層の生産性の低さから、生物学的には砂漠のような場所と軽視されてきた。

毎年冬から春にかけて、数百頭のホホジロザメの成体(おもにオス)が、カリフォルニア沿岸でアザラシやアシカを捕食して脂肪を蓄えた後で、この海域に集結する。位置情報タグのデータから、サメたちはカフェでしばしば50~100日を過ごし、定期的に水深450mから、ときには水深900mもの深海に潜水していることが判明した。

次ページ > カフェを示唆する証拠が最初に浮上したのは1990年代後半のことだった

翻訳=的場知之/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事