たとえどんなに不透明な世界情勢下でも、企業が持続可能な未来に生き残るためには、GX(グリーントランスフォーメーション)を新たな成長機会と捉え、社会課題解決とビジネス成長の両立の推進にいち早く取り組むことが鍵となる。脱炭素・ESG領域の「見える化」サービスを提供する国内最大手のアスエネが、GHG排出削減、再エネ導入状況などをGX推進度として「見える化」し公表した5つのランキングデータから、最先端でGX推進に取り組む日本企業にスポットライトを当てていく。
世界情勢の変化に揺れながらも、持続可能な社会のために潮流であり続けるGX
2015年9月、国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」を契機に、企業も「2050年カーボンニュートラル」達成に向けて大きく舵を切り始めた。日本政府も23年2月10日に「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定。経済産業省主導で「GXリーグ」を設立し、脱炭素・エネルギーの安定供給・経済成長の三立を目指す官民連携を進めている。
昨今では、地政学リスクの高まりや自然災害の多発、さらには米国発の「トランプ関税」などによる世界経済の不透明感が増し、GXへの取り組みは一時的に踊り場にあると感じる人も少なくないだろう。
しかし、SDGs採択から10年を目前に控え、環境に配慮した持続可能な社会の実現は待ったなしの状況にある。今もなお、GXを軸に新たなビジネスを創出する企業は増え続けており、取り組みの“量と質”は確実に拡大している。
そのようななか、現在のGXの取り組み状況を正確に把握する上で注目すべきが、CO₂排出量、ESG情報の「見える化」を支援するクラウドサービス「ASUENE ESG」「ASUENE ESG」を提供するアスエネが公表した最新のランキングデータだ。
GXの進捗度として最もイメージしやすいのがGHG削減量である。このランキングでは結果としての削減量を可視化するだけでなく、そこに至るまでの削減施策の導入や、削減施策の実行に必要な資金調達の状況までも可視化されている。これにより、GXの潮流を牽引する日本企業の姿が浮かび上がってくる。
今回は、ASUENEが発表した以下5項目のGXランキングを通して、日本企業のGXの“今”をひも解いていきたい。
(1)GHG(温室効果ガス)排出削減
(2) 再エネ(自家消費、PPA)導入率
(3)再エネ導入率
(4) ESG投融資額
(5) ESG調達額
GHG(温室効果ガス)排出削減ランキング
〜製造業企業が牽引する日本の脱炭素化〜

企業のGX推進状況を測るうえで、最も分かりやすい指標のひとつが「GHG排出削減」だ。本ランキングでは、削減量と削減率の双方を組み合わせ、排出削減への取り組みを総合的に評価したうえで企業を選定した。その結果、製造業各社の取り組みがひときわ際立つ形となった。
GHG排出削減に取り組む企業の代表格が、長野県・諏訪湖畔で創業し約80年にわたり地域や自然との共生を掲げてきた精密機器メーカー「セイコーエプソン」だ。ペーパーレス時代にあって、紙に印刷するプリンターを製造する同社は、レーザー方式からインクジェット方式へのシフトを通じて、消費電力とGHG排出量の大幅削減を実現。GXへの積極姿勢で業界内外に強い存在感を示してきた。
注目すべきは、同社が23年12月に世界中の全拠点において使用電力の100%再生可能エネルギー化を達成した点だ。さらに、グローバル基準と整合性をもたせるため、「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の承認を受け、科学的根拠に基づいた削減目標を策定している。