サイエンス

2025.05.05 16:00

人類進化の方向づけに地球のマントルが果たした役割

1974年にエチオピアで約320万年前の骨格化石が発見されたアファール猿人の女性個体「ルーシー(Lucy)」の復元像(Getty Images)

1974年にエチオピアで約320万年前の骨格化石が発見されたアファール猿人の女性個体「ルーシー(Lucy)」の復元像(Getty Images)

約3500万~2000万年前に地球のマントル活動によって、現在のアラビア半島とトルコのアナトリア地方の間がどのように隆起したかを、国際研究チームが調査した。

隆起の結果として陸橋が形成されたため、キリン、ゾウ、サイ、チーターなどの動物や人類の初期の祖先がアフリカを離れ、7500万年にわたる同大陸の孤立に終止符を打つことが可能になった。

この研究では、プレートテクトニクス、マントル対流、地形学と古地理学、進化人類学、哺乳類の進化、気候の進化、海洋循環などにわたる幅広い既存の研究分野を結集させ、マントル動力学の広範囲に及ぶ影響に関する包括的な物語を展開している。

今回の研究をまとめた論文の共同執筆者で、米テキサス大学の地球物理学研究所・地球惑星科学部とジャクソン地球科学校に所属するトールステン・ベッカーは「問題は、生物と地殻変動現象との間にどのような関係があるのかだ」と総括する。

物語の始まりは7000万~6000万年前、地殻プレートが地球のマントル中に滑り込んで融解し、形成されたプルーム(上昇流)がその約3000万年後に地表に到達した。このマントルプルームによる押し上げが、アフリカとアジアの地殻プレート同士の衝突と相まって隆起を形成したのだ。この隆起が一因となり、古代の海「テチス海」が塞がって現在の地中海とアラビア海に分かれるとともに、アフリカとアジアをつなぐ陸塊が初めて形成された。これと同様に、現在のアイスランドが海面より上にあるのは、マントルプルームの上にあり、かつ2つの地殻プレートの境界に位置しているからだ。

論文の筆頭執筆者のアイビン・シュトラウムは、テキサス大ジャクソン地球科学校の博士研究員だった時に、この地質学的活動がもたらす広範囲にわたる結果を分析した。テチス海の陸橋の出現と、初期のヒト科動物の進化とは密接に関連していると、シュトラウムは主張している。

現在はノルウェー研究センターとビェルクネス気候研究センターに所属する博士研究員のシュトラウムは「この浅い海路が塞がった年代は、マントル対流とそれに対応する動的地形の変化という特定の作用が原因で、作用がなかったとした場合に比べて数百万年早まった」と説明する。

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翻訳=河原稔

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