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2025.04.07 09:15

肝臓再生に光か AIがiPS細胞を肝臓に成長させる遺伝子を特定

Getty Images

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iPS細胞は人間のいろいろな器官に成長する可能性がある再生医療のスター的存在だが、現実にそこから肝臓などの臓器を作るとなると課題が多い。そのひとつに、iPS細胞のどの遺伝子を働かせると目的の臓器になる(分化する)のかがはっきりしないという問題がある。そこで、その遺伝子の特定をAIが自動的に行う技術が開発された。今後、次々に発見が進み、完全な肝臓が作られる可能性が出てきた。

iPS細胞を使って肝臓を再生する場合、iPS細胞を肝臓を構成する細胞に分化させなければならない。それは、iPS細胞にある肝臓の細胞に分化するための遺伝子を探し出してオンにする(発現させる)ことが必要だ。それでiPS細胞は肝臓の細胞として成長を始める。その標的となる遺伝子は、約1千万個ほどの候補から探し出さなければならず、専門家でも膨大な時間と費用がかかる。

分子情報に特化したAI技術を開発する企業SyntheticGestalt(シンセティックゲシュタルト)は、データサイエンスとAIを組み合わせたサイエンスAIの技術を使い、その標的遺伝子を自動的に発見する「遺伝子発現データを扱うAI基盤モデル」を開発。未発表の標的遺伝子の特定に成功した。これにより、標的遺伝子がごく短時間で見つけ出せるようになる。

肝臓は多機能な臓器なので構成細胞の種類も多く、それぞれに分化する標的遺伝子の発見が必要となるが、この技術を使えば、AIが次々と見つけ出してくれるはずだ。SyntheticGestaltでは、今後はロボットも導入して発見を加速させるという。

これは、日本政府が推進する「ムーンショット型研究開発事業」に参画しその支援で行われている研究だ。肝臓再生の研究が飛躍的に進むことが期待される。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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