
光井さんは英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業後、アレキサンダー・マックイーンへのデザイン提供や、イッセイ・ミヤケなどのファッションブランドで就業経験を経て独立しました。現在はインテリア分野でも国際的に評価を得ています。
「デザインをよく知らない人にも価値や良さが伝わる形を常に追求しています。今回PIXEL WEAVEで有名絵画を題材にしたのも、より多くの人に技法について興味を持ってもらうためです」
光井さんは、留学によって、文化的な表現や技法を全く異なる感性に響くように再解釈する面白さに目覚めたといいます。例えば、経糸と緯糸を染め分けて織ることで文様を作る久留米絣(かすり)の職人とコラボレーションした「ビジュアルイリュージョン」という作品では、「失敗作」とされていた糸のズレに美しさを感じ、それを利用した錯覚のデザイン表現がヨーロッパの国際見本市で注目を集めました。
DESIGNTIDEの会場では、訪れた人々に技法の特性を丁寧に説明したり、作品に実際に腰掛けるよう促したりして、デザインを超えた背景のストーリーを伝えようする姿が印象的でした。

3人のデザイナーに共通していたのは、品質や社会貢献性表示としてのトレーサビリティではなく、ものづくりの物語を辿るための痕跡や入口をデザインで示している点でした。美的な魅力の中に、関わった人や物の風景が感じられることで、受け手に物質以上のつながりを与えてくれるような気がします。
これまで素敵なものを世に送り出していても、作り手や入手元の詳細を示さない、あるいは隠そうとする人に何度も出会ってきました。そういった態度への違和感は、循環の可能性や関係性のきっかけを断ち切る意図を裏に感じたり、特権を専有しようとする姿勢が透けて見えたからだったのではと、今は感じています。
安西さん、プロセスの可視化が美になることは、新しいラグジュアリーの潮流を引っ張っていく価値の一つになるのではと考えているのですが、どう思われますか?